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TopPage >やさしい植物学教室 >植物体の生殖

植物の生殖

生殖とは、個体が持つ固有のゲノムDNAを継承し、生物が自らと同じ種に属する個体を作り出すことを言います(作り出す個体が「親」、作られた個体が「子」となります)。大きく分けて無性生殖と有性生殖があります。

[無性生殖]
1つの個体が単独で新しい個体を形成する生殖様式。自分と全く同じゲノムを持つ個体を生み出す、いわゆる“クローン”。植物の例は、ジャガイモのいも、オニユリのむかご、イチゴのつるなど。
[有性生殖]
2つの個体間でゲノムDNAの交換を行い、両親と異なる遺伝子型の個体を作り出す生殖様式。

「無性生殖」は環境が不変であればきわめて効率的な仕組みですが、環境の変化が起こると種全体が絶滅してしまうリスクを孕んでいます。そのためどの植物も、遺伝的多様性を高めることで変化を生き延びていくような個体を作り出す「有性生殖」の生殖様式を備えています。

種類別に見た生殖様式

この有性生殖について、以下では植物の分類別に生殖様式を紹介します。

①コケ植物

無性世代である胞子体と、有性世代である配偶体(卵や精子のような配偶子を作る体)という2つの世代があります。コケ植物の胞子体は独立しておらず、雌性配偶体に寄生しています。配偶体は雌株と雄株があり、それぞれ造卵器と造精器で配偶子を作ります。
胞子体の作る胞子が発芽して配偶体が作られ、配偶体から精子と卵細胞が形成されます。そしてそれらが受精卵を作り、胞子体と成る、というサイクルが成立しています。


スギゴケの生活環
図引用:生物図説p91(1997)秀文堂

受精までの流れ…まず降雨などで地表や植物体の表面が濡れているときに精子がその水中を泳いで、雌株の造卵器に入り、卵と合体します。こうして発生した受精卵が胞子体となります。胞子体は配偶体に付着して成長し、その上部に胞子嚢(胞子の入った袋)ができます。この中で多数の胞子が形成され、散布され、発芽し、これが成長して雌雄の配偶体となります。

②シダ植物

コケ植物と同様に、無性世代である胞子体と、有性世代である配偶体という2つの世代があります。コケ植物と異なるのは胞子体が配偶体から独立しているという点です。配偶体は前葉体と呼ばれ、造卵器と造精器の両方を持ちます。シダ植物の生殖のサイクルは基本的にコケ植物と類似しています。


イヌワラビの生活環
図引用:生物図説p91(1997)秀文堂

受精までの流れ…胞子体の葉の裏側にある胞子嚢の中で胞子が作られます。胞子が発芽すると配偶体となります(シダ植物の配偶体は前葉体と呼ばれるハートのような形の体です)。前葉体には造卵器と造精器ができその中でそれぞれ卵と精子が作られます。そして精子が卵の元まで泳いで行き、受精し受精卵が発生します。受精卵は前葉体についたまま成長し、胞子体となります。そして前葉体は胞子体の成長とともに消滅していきます。

③種子植物

基本的に種子植物の生殖は、花の内部にある雄蕊で作られた花粉が、雌蕊の先端の柱頭につく「受粉」によってスタートします。裸子植物と被子植物では「胚珠が子房に包まれているか否か」という大きな違いがありますが、生殖の仕方も異なっています。


(1)裸子植物の重複受精

裸子植物には雄株と雌株があります。雄株で作られた花粉は風などによって雌株の元へ運ばれていき、花粉内の精子が雌株の花粉室内の液中を泳いで卵細胞と受精します。
また、裸子植物は被子植物と違い、胚珠(後に種子となるもの)がむき出しの状態になっています。


裸子植物の受精
図引用:生物図説p85(1997)秀文堂

受精までの流れ(イチョウの例)…雄花は葯と花糸から成っていて、葯の中で花粉が作られます。花粉は、成熟すると栄養細胞・生殖細胞・花粉管細胞の3つの細胞になります。一方の雌花は、2つの胚珠から成ります。胚珠内には1つずつ胚嚢細胞があり、これが成熟すると胚嚢となり、花粉室と2個の造卵器と胚乳ができます。
花粉は風により雌花の元へと運ばれて雌花の花粉室に入ると、一端は花粉室の壁に侵入し、他端は花粉管となります。そして、生殖細胞が分裂して精細胞(繊毛を持ち動き出すため、精子とも呼ばれています)を作ります。花粉管から泳ぎだした精細胞(精子)は、卵細胞に侵入して受精を完了します。この受精卵から胚が発生します。


(2)被子植物の受精

雄蕊の先端に葯が存在しその内部で花粉が作られます。花粉は成熟すると、内部に2つの精細胞と1つの花粉管核が形成されます。一方の雌蕊は柱頭・花柱・子房のパーツから成り、子房内部の胚珠において卵細胞が作られます(子房は後に果実になる部分、胚珠は後に種子になる部分です。


被子植物の受精
図引用:生物図説p85(1997)秀文堂

受精までの流れ…葯で作られた花粉は雌蕊の柱頭に辿り着くと、花粉管を花柱に伸ばして精細胞を胚珠に運びます。
ここで被子植物に特徴的に見られるのが「重複受精」と呼ばれる受精のメカニズムです。胚珠に向かって運ばれる精細胞の数は2つあるのですが、この二つの精細胞が個別に受精を行うため「重複」受精と呼ばれています。一つは卵細胞と受精し胚(将来的に植物の体となるもの)ができ、もう一方は中央細胞と呼ばれるものと受精し種子の中で胚の栄養分となる胚乳が作られます。

被子植物は自家受粉(同じ花の中で受粉・受精を行う)するものだけでなく、自分の持つ花粉では受精が起こらずほかの個体の花粉ならば受精が可能である、「自家不和合成」という仕組みをもつ植物が多く存在しています(ナシ、アーモンド、ペチュニア、オリーブなど)。これは遺伝的多様性を持たせようとして植物が獲得してきた仕組みであると考えられています。

余談ですが、コケ植物、シダ植物、裸子植物は「精子」を持っていますが、被子植物を持っていません。これは被子植物が水を媒介した受精をしなくて済むように進化したためです。そのため被子植物は、乾燥地帯など幅広い環境に適応し、多様性を広げることができたのでしょう。


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生物図説(秀分堂)、植物の体の中では何が起こっているのか(ベレ出版)
生物のしくみ(日本実業出版社)
http://keirinkan.com/kori/kori_biology/kori_biology_n1_kaitei/index.html、http://www2.tokai.or.jp/seed/seed/seibutsu19.htm